・・・目を覚ます。

何時もと変わらない天井、何時もの部屋。だが、何かが違う。
間近に人に気配を感じる。
俺は身を硬くする。薄く目を開き、体を動かさずに周囲の気配を探る。
ふと、腕の中で寝ているシャナに気づく。
「そうか・・・そう言えば、そうだったな・・・。」
苦笑して、独り語散る。
誰かと共に寝るなど、何年振りだったか・・・。その最後の記憶は、遠く記憶の海に紛れ、最早、相手の顔さえぼんやりとした靄を通してしか、思い出せない。

良く眠っているシャナを起こさない様、気を付けて腕を抜き、身を起こす。
足元に散らばっている服を拾い、洗濯機の中に放り込む。
クロゼットからシャツとズボンを出し、着込んだ後、しばし考えてから、シャナの服も一緒に洗ってしまうことにする。下着を別にし、服を洗濯機の中に入れ、スイッチを入れる。

動き出した洗濯機の音を聞きながら、ベランダに出る。冷やりとした、冬の空気が寝起きの眼を刺激する。半袖のシャツから出た二の腕が、泡立つ感触がする。俺は目を閉じ、何時もの様に朝の修練を始める。
亜熱帯とはいえ、宇津保の島にも既に冬は訪れている。
冬の精霊が俺の中に入ってくる。冷たい、澄んだ感触が染み渡る。
束の間、故郷の幻を見る。何時か、シャナを連れて行ってやりたいものだ、などと思いながら、俺は体の中にいる冬をゆっくりと解放した。

俺は一つ息をつくと、踵を返して部屋の中に戻る。
湯を沸かし、珈琲を煎れる。部屋の隅のベッドに目をやると、シャナが身動きをするのが目に入った。近寄り、ベッドに腰を掛ける。
「おはよう、シャナ。良く眠っていたな。」
声を掛ける俺に、シャナは眠たげな目でそれに答える。
シャナの頬に軽く触れ、唇を寄せる。
シャナが小さな声を漏らす。
俺は立ち上がり、
「起きるか?珈琲が入っているが。」
返事を確認して微笑を返し、台所へ向かう。
珈琲の良い香りを感じる。

申し分の無い、良い朝だった。



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Since 2000/05/06
Update 2002/09/14
written by アイラン=リウフェン[学籍番号H152471]
シャナ=D−シャーナ